朝4:10、起床。
まだ辺りは薄暗い。
身震いする寒さに耐えられず、寝袋に入ったまま急いでお湯を沸かす。
それにハチミツを入れて一気に体に流し込むと、一気に全身が温まる。
栄養価も高いし、お手軽な朝ごはんとしてはちょうどいいや。
久しぶりに鞍を付けたり、荷物を縛り付けたりしたせいか、やたらと手間取ってしまい出発準備ができたのは6:45。
辺りもすっかり明るくなってしまった。
まだ隣のゲルのみんなは寝てるみたいで、最後に会えなくて少し名残惜しいけれど久しぶりにジョナの背中に跨って出発した!
軽い速足でぐんぐん進む!
ジョナもクロも疲れはとれたみたいで絶好調だ!
しばらく進むと、3日前にいた湖の反対側に出た。
キラキラ光る湖は今日も変わらず綺麗だ。
周りには人も車もゲルもない。
大自然に一人だけの状態。
やわらかい風が吹くたびに草がサラサラとならす音と、馬の息遣いだけが聞こえる。
なんて幸せな日なんだろう。
そう思っていると急にクロが進まなくなってしまった。
やたらと草を食べたがっている。
しばらく休ませすぎて、夜中に食べるのを忘れたのかな?
まだ出発から2時間も経ってないけど、もう15kmちかく進んでるし食事休憩でもさせてあげるか。
草原に寝ころんで、ゆっくり流れる雲を眺めていると、知らぬ間に寝てしまっていた。
2時間ほど経って、いざ出発しようとしたけど、やっぱりクロは動きたがらない。
蹄や背中に鞍ズレがないかを見てみたけど、特にどこも悪くなさそうだ。
何が原因なんだろう。
心配だけどそこに留まっていてもしょうがないから、荷物をジョナの背中に移してそこからはクロを引っ張りつつ歩きで進むことにした。
しばらく歩くと、遠くにゲルが見えたので、そこでクロを診てもらうことにした。
そのゲルの近くに立っている木の柱には馬が2頭も繋がれていたから、きっと馬の事をわかる人がいるのだろう!
ゲルのドアをノックしてみると、顔が土埃で汚れた50歳くらいのおじさんが出てきた。
「どうした?とりあえず中に入ってお茶でも飲んでいきなさい」
中には奥さんと子供もたくさんいた。
すごく親切そうなおじさんに、今までの経緯やクロの状況を話すと、快くクロを見てくれることになった。
クロの歯や、蹄、背中、膝と色んなところを一通り見終わると、笑顔で「この子はどこも悪くない。2時間も休めばまた歩けるようになるだろう」と言った。
休んでる間、「ご飯でも食べていきなさい」と肉うどんを分けてくれ、アルヒ(牛の乳から取れるウォッカ)も飲ませてもらった。
やたらと人懐っこい3才の子供がずっと袖を引っ張ってくる。
みんないい人たちで笑いの絶えない明るい家族だ。
しばらくすると雨が降ってきた。
既に12時を過ぎているし、クロの調子も悪いから今日はここでテントを張ることにしよう。
「今夜はこのゲルで寝なよ」とみんなは言ってくれるけれど「馬が見える場所で寝たい」と伝えて、外にテントを張らせてもらった。
夕方には雨も止んで、子供たちがテントに来てバレーをやろうと誘ってきた。
一通りの準備も終わったし、一緒にバレーをしていると、ずっと3才の子が付いてくる。
本当にかわいい子だ!
夜もゲルにお邪魔して、色んな遊びをしたり、お酒をのんだり!
ご馳走になったお礼に、牛乳を脂肪とミルクに分離させる機械をぐるぐる回していた。
これが結構な力作業!
この脂肪でお菓子を作ったり、ミルクの方ではアルヒを作るらしい。
結構、腕が疲れた!
お礼を言って、明日の朝に出発するというと、みんなまだいろって言ってくれる。
3才の子は「行かないでー!」と泣き出してしまった。
今日会ったばかりの赤の他人にこんなに優しくしてくれるなんて。
本当にうれしい気持ちで一杯だけど、今日は予定より全然進めていないから、もうこれ以上遅れるわけにはいかない。
みんなにお礼を言って、外に出た。
ゲルからテントに戻る時、クロの様子を見てみるとあんまり状況が変わってないように見える。
もともと小柄なクロには、この道程が厳しすぎたのかもしれない。
もう今のペースのままだと残りの2ヵ月で横断するのはほぼ不可能。
どこかでクロを別の馬と交換したところで間に合う可能性はかなり低い。
ギブアップをするべきなのか。
日本を離れてもう1年2ヶ月が経ち、うまい日本食も、ゲームも、仲のいい友達も、ふかふかのベッドも全てが恋しい。
ただ、ここで諦めれば自分の力はここまでなんだと認めることになる。
それは今後の人生においても大きく影響するだろう。
とにかく出来るところまで精一杯やって、常に冷静に判断することを意識しながら最善を尽くしていくしかない。
今はまだ答えを出すには早すぎる。
やれることを全てやってから考えることにした。
2013.07.06
【10日目】クロが動かない
移動距離:20km
座 標:北緯 49.12623 , 東経 91.23009
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