昨日のご飯のおかげか少しは体が回復した!

夜通しジョナサンとクロの監視をしてたからまとまった時間は寝れてないけれど、昨日に比べればかなりマシ!

ジョナサンもクロも朝になったら川の水を飲んでくれたし、クロの鞍ズレも完治したから今日はクロに乗って5:45に出発!



昨日まであんなに暑かったのに空が分厚い雲で覆われているお陰で少し寒いくらい。

10分走20分歩ペースで順調に進んでいくと、乾いた岩ばかりの荒野になってきた。


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20kmほど進んだところでクロがバテて、一旦降りて歩きながら引こうとするも全く進もうとしない。

30分ほど休んで寝かせても全く動こうとしてくれないけれど、何故か俺が乗るとゆっくり歩き始める。


かなり時間は掛かりそうだけど、とりあえずゆっくり歩きのペースで少しずつ進むことに。


今日は全く人やゲル、家畜を見ていない。

途中、遠目にトラックを1台見たきりだ。



360度見渡す限り、道路もなく誰もいなく人工物が何もない景色は今まで全てを独り占めしているような気になれて贅沢に感じていたけれど、今日は分厚い雲のせいなのか草や川のない乾いた大地のせいなのか大自然の恐ろしさを感じる。



ずっと草や川も見かけていないけれど目的地の村まで行けば家畜用の草と川があるはず。

最悪、なかったとしても人に聞けば川の場所を教えてもらえる。



そんな風に自分に言い聞かせながら進んだ。


17:00頃、目的地の村のあるはずの場所に到着したけれど荒野に大きな岩が点在するだけでゲルや人、車の影すらない。


羊やヤギの糞が落ちているのを見つけて、靴で踏んでみると中まで完全に乾燥していてボロボロと崩れた。

かなりの時間が経っているようだ。



家畜の糞があるし、少し前にこの辺りに人が住んでいたのは間違いないだろう。


冬営地として冬だけ使っているのかな?




とりあえず周りを探索してみるも川どころか草も全然生えていない。



しばらくして干上がった川の跡を見つけた。


おそらく川が枯れてしまって村ごとどこかに移動したということなんだろう。



今日は人を全く見てないし川の場所を誰かに聞くことも出来ない。

次の村までは30km程ある。




ここで休ませてもクロもジョナも体力が減っていく一方だしこのまま次の村まで進むしかない。

今日12時間かけてようやく40kmを進めた。

これからこれに近い距離を本当にこの疲労の中で進めるのか。



かなりまずい状況だな。



次の村まで獣道のような道もあるけれど地図を見る限り、大きく迂回していて50kmほどの距離がある。


さすがに今から50kmを進むことは現実的じゃないからコンパスを片手に次の村まで直進して30kmにショートカットすることにした。



日没までのあと4時間。

明るいうちに出来るだけ距離を稼いでおきたい。

ジョナサンに積んでいた荷物をクロに乗せ換えて、ジョナに跨り10分走20分歩のペースで先に進む。


クロもジョナサンもさっきまでゆっくり歩きのペースで回復できたのか、緊急事態だということを感じ取ったのか、急に早く走ってくれるようになった。

荒野を少しずつ上っていくと、所々に穴の空いた赤茶色の岩がそびえ立つ岩山地帯になってきた。


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▲岩山地帯に入る少し手前の写真。岩山地帯は余裕がなくて写真は撮れなかった。



どんよりした曇り空のせいでオオカミでも出そうなヤバそうな雰囲気だ。


辺りには人の通った跡のようなものは一切なくて、周りにそびえ立つ岩が邪魔をして先を見通せない。


勿論、携帯の電波もなくて、何かあったら誰かに助けを呼びに行くなんてことも不可能だろう。



日没間近の大自然に俺一人という状況が恐ろしくも感じたけれど、疲れのせいで感覚が変になっているのか好奇心や高揚感の方が強いことに気付いた。



こんなところでオオカミに囲まれたくないなと考えてながら進んでいたら、岩の上に2匹の犬のようなものがじっとこちらを見ている。


立ち止まってよく見てみると子供のオオカミだ。




普通10~20頭くらいで群れているはずのオオカミが子供たちだけでいる訳がない。

オオカミは警戒心が強いから親たちは少し遠くからこちらを伺っているのだろう。



辺りを探してみてもどこにも親らしきオオカミは見えない。

しばらくすると子供のオオカミたちは岩の裏に走って逃げてしまった。



囲まれたら本当にまずい。


出発前に千夏さんから聞いたバイクの国際レースで起こった事件を思い出していた。

数年前にモンゴルで開催された長距離バイクの国際レースで、一人の選手がいつまで経っても帰ってこなくて警察を含めた捜索隊が選手を探すと、中身が入ったままのブーツのみが見つかった。

恐らくオオカミにやられて、バイク用の頑丈なブーツの中だけが無事だったのだろう。



彼の場合は国際レースの選手だから捜索隊を出してもらえて、コースが分かっていたし頑丈なブーツを履いていたから発見されたけれど、今自分が彼と同じ目にあったらただの行方不明で処理されるのだろう。



すぐに見通しの良い所まで走って、3mの鞭と大きなナイフをいつでも持てるところにセットした。


風が弱いお陰で音はよく聞こえる。

オオカミの姿は見えないから確証はないけれど遠くで小さな石が落ちる音が聞こえる度にオオカミがついてきているのかと警戒した。



岩山はジョナサンに乗ったままでは登れないほど急になってきたから降りて引いて進む。

何度も腹帯が緩んでないか確認しながら岩を登った。



日も暮れてきて、ヘッドライトと懐中電灯の光を頼りに進む。

日本から持ってきた1km先も照らせるLEDの懐中電灯のおかげで多少はマシだけれど、それでもやはり視界が悪くて何度も急な崖で登れない行き止まりのような場所にぶち当たった。



22:00頃、崩れかけた家を2軒発見!

小さな村がこんな場所にあったのか!と近づいてみると昔に家の土台になっていたような跡は複数あるけれど建物自体は崩れかけて天井のない家が2つあるだけだった。

周りを探しても川はないし、ここも恐らく川が干上がって数年前にどこかへ移動してしまったのだろう。


乾燥して少し茶色になった草は生えていたからジョナとクロに食べさせる為にもそこで40分ほど休憩。

オオカミを警戒しつつ、地図とGPSで自分の位置と次の村の位置を確認。


順調に行けば次の村には1:30頃に着けそうだ!



雲が晴れて半月が出てきた。

おかげでかなり見通しがいい!



急いでジョナに跨り出発するも23:00すぎには月が地平線の向こうに沈んでしまった。


未だ岩山地帯を抜けられず、大きな石が転がっていたり、いきなり穴が開いていたり、急に崖になっていたりしている。

この真っ暗な中、そこを馬に乗って進むのはあまりに危険だからジョナから降りて、歩いて進む。



今日は朝から何も食べてないから空腹と眠気と疲労がピークに。

歩く気力もなくなってきたから、携帯でいつも聞いているGLAYの曲を聞きながら進む。


正直、携帯の充電は残しておきたかったけれど村に行けばどこかで充電させてくれるだろうし、今は何かあった時に冷静に判断できる気力を残しておく方が優先だ。


こういう時、気力を絞り出させるのに音楽は最適だった。




しばらくして車の轍を見つけたから、かなり楽になった。

きっと村も近いのだろう。


2:30を過ぎても村にはつかず、地図で位置を確認してみるとあと5km先だった。



俺もジョナもクロも体力の限界が来ていたから、オオカミを警戒して見通しの良い所に移動し、ジョナとクロのすぐ近くに座ったまま30分程仮眠をとった。

ジョナとクロも寝ていた。




移動距離:
座  標:北緯 , 東経