やっと夜空が薄っすら明るくなってきた。

1時間の仮眠じゃ足りる訳もなく、ものすごく眠い。


体の疲れもピークに来ているので今日はこの場所でゆっくり休むことにした。

眠かったけれど1週間以上洗えていない体を洗いたい願望の方が強かったから村の少し離れた川まで馬で行った。


朝日で真っ赤な草原を川沿いに進む。

気温もまだ低く、ジョナサンの鼻息が白いほどに寒い。


川の周りに人がいないことを確認して服を全部脱いで全裸になり、気合を十分に溜めてから川に入った。

久しぶりの水浴びの気持ちよさと、冷たすぎる水の刺すような痛さでなんとも言えない感覚。

それでもやっぱり体を洗うだけで疲労が回復してきてる感じがする。


頭と体を洗い、服も全部洗って海パン一丁で馬に跨って帰った。


町の脇を通る時に、通りがかりの人たちがみんなこっちを見てくる。

冷静に考えるとこんな寒い時間に海パン一丁なのは明らかに怪しく見えるだろう。


洗濯物をわざと見せるように肩にかけたりして洗濯帰りをアピールしながらテントに戻った。


体が綺麗になってサッパリしたせいか、眠さがもう限界に来ていた。


さっさとその辺の草むらに洗濯物を広げて置いていると、10歳くらいの2人兄弟たちが「日本人??」と言って近寄ってきた。

いつもだったら遊んであげるけど、正直もうその体力も気力もない。


「今から洗濯物干して寝るからまた後で来てねー」

眠そうに、素っ気なく返したつもりだったけれど、兄弟は「手伝ってあげるよ!」と無邪気にはしゃぎながら洗濯物を干してくれた。


「昨日、寝れてないからもう寝なきゃいけないんだ。ごめんね」

そう言うと、その兄弟は「じゃあ俺らも一緒に寝る!」と言って聞かない。

埒が明かないから「また後で来てねー!」と言って寝る体制に入ると、勝手にテントを開けて兄弟も寝始めた。


もう面倒なのと、眠気も限界だからそのまま眠りに落ちた。





「おい!起きろ!」

15分くらい眠ったところで大人の大きな声に起こされた。


目を開けると昨日の警察の一人が来ている。

「なんですか?」

不機嫌そうに返事をした。

半分、寝ぼけているのもあって正直、警察とかどうでも良くなっていた。

警察「今日は休みだから遊びに来てやったよ!」

自分「最近、全然寝れてないので寝かせてください。。。」

警察「日本の話とか教えてくれ!写真とかないのか?」

自分「あるけどカメラのバッテリー切れてます。(本当はバッテリーもあるけれど)」

警察「そうなのか!じゃあ持ち物見せてくれ!銃とか持ってないだろうな!外国人が持ってたら重罪だぞ」

自分「持ってないです。荷物はこれです。」

警察「銃も持たずに一人で横断する気か!お前死ぬぞ」

自分(どっちだよ。銃持ってたら重罪なんじゃないのか)

自分「本当に眠いんで寝かせてください」

警察「わかった!また後で来る!」


子供たちは今のやり取りで完全に起きてしまって、「もう起きる?」「一緒に遊ぶ?」と目を爛爛と輝かせている。

今は申し訳ないけど眠すぎる。

「起きない。遊ばない。」と素っ気なく返して眠りについた。



諦めたのか、二人はテントから出てどこかに行ってしまった。

やっとゆっくり寝れる。



安心して眠りに落ちると、すぐに別の子供たちがやってきた。

子供A「こんにちはー。こんにちわー!!!こんにちわーーーー!!!!」

子供B「あれ?起きないね」

子供C「こうすれば起きるんじゃない?」


嫌な予感はしたが、子供たちが一斉にテントを叩き始めた。

「コラーーー!」

大声を出して外に出ると、子供たちがキャッキャと笑い出した。

かなり面倒な子たちが来たな。


勝手にテントに入ったりして遊んでるし諦めて少しだけ一緒に遊んであげて、飴をあげる代わりに帰ってもらった。


やっと寝れる。

1日寝て、体力を全回復させる予定だったのにもう昼過ぎだ。


急いですぐに眠りに落ちた。


「おーい。おーい。」



またすぐに次の来客が。

今度はおじさんだ。


酒を片手に「一緒に飲もうぜ」とのこと。

事情を説明して、もう眠りたい事を伝えるとすぐ理解して帰ってくれた。



もういい加減に寝たい。


また眠りに落ちて30分程経過すると、子供たちのキャッキャしてる声で目が覚める。


そろそろ怒りも感じながら目を開けると、最初に来た兄弟がテントの中でちんちんを出して踊っている。

「なにしてんだw」

さすがにその光景には笑ってしまって、結局は最初の約束通りに遊んであげることにした。

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一緒に鬼ごっこして、日本の写真見せてあげて、相撲も取ってあげて、食材の買い物に行って解散。

夕飯にソーセージとゆで卵をテントで作って食べたら、急にお腹を壊した。

恐らくはゆで卵がダメだったんだろう。


日が暮れてしばらくすると青年が訪ねてきた。

「あんた、馬で東に行くんだって?昔から旅に憧れていたんだ。俺も連れて行ってくれないか??」

「え?食料とか荷物は??」

「ない。馬は持ってる」

外に出てみると小柄な馬がそこにはいた。

恐らく、横断は難しいであろう。

「食料はどうするんだ??お金は??」

「ないけどなんとかする。」

「テントは?」

「あんたのテントじゃダメか?」

「見ての通りだけど、荷物を入れたら2人はかなりきついよ」

「じゃあ外でもいい」


なかなか諦めてくれない。

一人でもギリギリなのに、水と食料を2人分クロに乗せるのは無理だろう。

第一、お金も足りないくらいだ。


「絶対にあんたの役にたってみせる!」

「本当にごめん。そんなに余裕はないんだ」

「馬の事も分かる!」

「それでもダメなんだ」


そんな押し問答が1時間以上続いた。

しばらくして、青年は自分が乗ってきた馬がいなくなっていることに気付いたようだ。


「大変だ!一緒に探してくれないか!」

「わかった!」


そういって一通り懐中電灯で探してみたけれど、どこにも馬はいなかった。

青年は友人からバイクを借りたらしく、バイクで探しに回っている。


近くにはその友人なのか他に2人くらいの青年も一緒に探し回っていた。


腹いせに青年たちに馬を盗まれる可能性もゼロではないから、夜通し馬の監視は続けることにした。

折角、睡眠不足解消する為の1日にするはずだったのに結局あまり回復ができず。。。



移動距離:0
座  標:北緯 49.22994 , 東経 92.34339